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図5ニューエクササイズウォーキングの筋電図。

 

高齢者歩行を筋電図の面からみると、成人歩行に比し、接床期の間、下肢筋に過剰な筋放電がみられた。日常歩行や速足歩行ではみられない前進力の得られる踵押し上げ時にジョギングと同様ハムストリングスが参画した。これは体前傾姿勢に起因していることが考えられる。特に体重負荷のかかる接床期では、中腰体前傾のために働く内側広筋、大腿二頭筋、大殿筋に強い持続放電がみられ、1歳頃の乳幼児独立歩行初期の放電様相に極めて類似していることがわかった3.4.6.10.11)。
このことは、高齢者の歩行は成人歩行に比べ、かなり多くの筋を使い、過緊張状態で歩いていることを示している。高齢者の歩行動作は幼児に類似してくると言われているが、今回の動作・筋電図実験から、高齢者歩行は筋力やバランスが十分に発達していない歩行習得初期の非常に不安定な歩行パターンに退行することが示唆された。
しかし、高齢者の杖・手押し車等の支持歩行では、不安定さを示す着床前の腓腹筋の強い放10)電が減少・消失する傾向を示した。また、背すじを伸ばす時、杖・手押し車等を用いると、接床期の間、体前傾に働く抗重力筋である腓腹筋、大腿二頭筋、大殿筋の強い放電は減少・消失し、過剰な

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図6ニューエクササイズウォーキング。ニューエクササイズウォーキングの3つのポイント:

?@ 背すじを伸ばす(上体を引き上げる)
?A 足先を少こし外向きにする(踵を一直線上に置く)
?B 強く踵を押し上げる(強いpush off)
日常歩行に比し、より積極的に働く筋1腹筋・背筋上部・大腿直筋・ハムストリングス・大殿筋
筋緊張が解除されることがわかった(図10)。
要するに、筋力やバランスがかなり衰えた高齢者の歩行は、成人歩行よりかなり筋負担が大きいが、杖・手押し車等を用い安定すると、筋負担が軽減されるので、より長く歩くことが可能となるものと思われる(図11)。

おわりに

通常、移動の手段として用いられている歩行が、健康増進運動としての歩行になるかどうかを、筋の働きの面から検討した。
負荷の軽い日常歩行でも長時間行なうことによって、多くの下肢筋が強化されることが筋電図

 

 

 

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